- HIP HOP
基礎用語 -
リリック
MCがラップするときの歌詞のこと。かつてのMCは基本的に自己顕示欲に満ちたものが多かったが、現在ではテーマの多用化が進んでいるようだ。
MCはだいたい「リリック」「ライミング」「フロウ」「声」などの要素を軸に評価される。とくに優れたリリックを書くMCのことを「リリシスト」という。
ライミング
MCがラップをするときのルールのひとつ。ひとことで言えば、押韻(おういん)すること。英語圏の人は、日常的に韻を踏む習慣があるようだが、日本ではあまり馴染みがないらしい。
かんたんに言うと、言葉尻の母音を合わせて、たとえば、「りんご」「金庫」「ヒント」「インド」など、母音を「い-ん-お」に合わせることである。
これらの単語をうまく歌詞内に配置し、ビートに合わせてライミングする。日本でこのルールを徹底した最初の作品は、キングギドラ「空からの力」だと言われている。
フロウ
MCがラップするときの言い回しのこと。独特のタイミングやイントネーションで「変則的なフロウ」をするMCや、お経を読み上げるような「棒読みフロウ」のMCなどが存在する。
優れたフロウをもっているMCは、オリジナリティが高い反面ライミングを重視しない傾向がある。詩を朗読するような「ポエトリー・リーディング」がその典型。
スラング
スラングとは、特定の共通する集団の中でのみ通用する隠語・略語・俗語のこと。一般の人には通じない裏の意味を持つ言葉である。
いわゆる「業界用語」のように考えればわかりやすい。警察官の用語でいうところの「アンパン⇒シンナー」「イヌ⇒スパイ」といった具合だ。
具体的には、「クリーム⇒お金」「アイス⇒ダイヤモンド、覚せい剤」「ジュース⇒権力」などがヒップホップのスラングの一例。
地域やグループ、時代などで通用するスラングが異なるため、ヒップホップ業界全体で通用するというわけではない。
クラッシック
「時代を問わず世界中で愛されている音楽」というのが本来のクラシックの意味。そこから「10年後も聴けるヒップホップの名盤」を、クラシックと表現するようになった。
名盤といっても好みは人それぞれ。リスナーの数だけ「名盤」がある。そのため業界全体が認めた「名盤」をクラシックと呼ぶことにした。
その基準のひとつがアメリカのヒップホップ雑誌「The Source(ザ・ソース)」のアルバム紹介コーナー。ここでの評価で満点が出ることはほとんどない。
その数、1990年から1999年までの10年間でたったの23枚。ここで満点を獲得した作品はクラシックと認定しても問題ないというわけだ。
サンプリング
すでに存在している誰かの曲。過去に名曲と呼ばれる楽曲はたくさんある。そんな名曲の「いちばん気持ちいい部分」を切り貼りしていく作曲手法のこと。
最初は遊びで名曲をカスタマイズしていたが、市場が拡大してお金が動くようになると問題が発生。「原曲の作曲者に無断で金儲けするとは、けしからん」となる。
その後、原曲の権利をもつ人間から承諾を得るか、原曲使用料などを支払わないとサンプリングできなくなってしまった。
時代とともにサンプリング規制は厳しくなる傾向にある。逆を言えば、過去にさかのぼるほど露骨にサンプリングしている作品が多くなる。今では絶対に許可が下りない奇跡の曲も多数存在する。
プロモ盤
ヒップホップ文化の初期はクラブ(現場)至上主義と呼ばれ、若者はクラブに通いDJがかける最新の楽曲をたのしんでいた。曲がよければレコードが売れるのだ。
DJに曲をかけてもらおうと流通前のレコードが人気DJのもとに殺到しサンプル盤を渡していく。当時はこうしたプロモーションを行なうのが主流であった。
このように、プロモーション目的でDJに渡されるレコードのことを「プロモ盤」という。たいがいは発売前のものでラベルも無表記(ホワイト盤)のものも多い。
ミックステープ
クラブに行けば、最新の楽曲をノンストップMIXで楽しむことができる。その日のプレイをテープに録音して販売していたこともあった。ところが音質は劣悪だった。
そこで、プロモ盤を大量にもらったDJが、これらのノンストップMIXをテープに録音して販売。これが「ミックステープ」。最新曲の詰め合わせである。
ミックステープはリスナーにとっての「予習ツール」としてうまく機能していた。また、新旧問わずコンセプトに従った選曲でつくられたノンストップMIXも「ミックステープ」と呼ばれる。
時代の流れもあり、CD-Rに焼いた「ミックスCD」、「YouTube」などのソーシャル・メディアで流すDJも登場したりと、ミックステープはその時代に最適化された媒体に姿を変えたプロモージョン・ツールである。